安里会頭緊急メッセージ!

この記事は2009年5月19日に投稿されました。現在の状況とは違う可能性がございます。

新型インフルエンザ 〜今こそ冷静な対応が求められている〜去る5月10日のカナダ留学から帰国した大阪の高校生と教師の感染確認を皮切りに、いよいよ国内での新型インフルエンザ感染者が5月18日現在で160人(報道ベース)を超えることとなった。政府による感染拡大阻止に向けた水際での慎重な対応や、国民に対する適時の情報開示、そして予防対策の啓蒙が奏功し、国内感染が発見されてからも、状況は比較的冷静な反応で推移していると見受けられていた。しかし、いよいよ海外渡航歴のない人から人への感染事例が多発し、流行の兆しを見せ始めている。この新型インフルエンザウィルスは、WHOの公式発表によると、メキシコを中心に世界で既に72人の死亡が確認(5月18日現在)されており、世界での感染者数は8,000人を超え、WHO警報フェーズ6(パンデミック:持続的に人から人への感染)引き上げが秒読み段階にまで来ていると言われている。いま、豚由来とされるこの新型インフルエンザに、世界中がこれほどまでに神経をとがらせる要因の一つに、2002年11月の発生確認から2004年5月のWHOによる終息宣言にかけて中国東部を中心に猛威をふるい、実に死者775人を出したとされるSARSの苦い経験が挙げられる。2002年の最初の発症確認から、国内流行を防ぐ対策を取りつつも、中国政府が公式にWHOへ情報を通達したのは翌年2月であったとされ、このために国際的な対応が遅れ、全世界的に罹患者が急増、発症者数は8,069名にも及んだ (2003年7月WHO最終報告)。同様に、今回の豚由来インフルエンザについても、メキシコ政府当局によると、最初の発症例は去る4月13日としているが、3月中旬から広まった可能性も認めており、初動の遅れが現在の拡大の原因であるとも言われている。4月29日、WHOはマーガレット・チャン事務局長の英断により、新型インフルエンザの警戒レベルをフェーズ5(かなりの数の人から人への感染)に引き上げた結果、国際社会はより一層、細心の注意を払い、併せてこれら情報が世界に一斉配信されることにより、各国国民の注意が更に喚起され、予防の一助となっているのも事実だと思う。ちなみに、マーガレット・チャン事務局長は去る1997年に大流行した鳥インフルエンザ発生時の香港の衛生局長であり、外部からの圧力に耐えながら鶏150万羽を処分、この感染症の流行拡大の防止に貢献したという。経験に基づく同事務局長の英断に敬意を表したい。しかしながら、充分な予防対策や警戒を怠らず冷静な対応が求められるなか、現在の警戒レベル情報等に起因すると思われる、過剰な反応によって引き起こされる問題も露呈している。一部の国では、メキシコ人に対する差別的な扱いやメキシコの航空機の入国を停止する措置が報告され、国際的な摩擦が発生する一方で、日本国内では、来日するメキシコ人の査証免除を4月29日から一時停止しているという。また、発生国以外の海外から帰国した発熱患者に対し、病院側が診察拒否をするなどの報告があったというのだ。我が国では関西の高校生などを中心に感染が広がっている現在、学校閉鎖や公共施設の休止など、市民生活に大きな影響を及ぼしている。毒性の程度や感染力の強弱に基づく効果的な予防対策が未確定の状態で、スーパーや薬局ではマスクと消毒液が一斉に売り切れるなど、パニックに近い状況を私たちはどう見るのだろうか。世界各地で活躍する我が国際グループのメンバーからの報告によると、実際に彼らが活動の中で見聞きした現状と、国内報道とはギャップが存在するようだ。マスクを歩く市民の姿は珍しく、習慣の違いもあるのだろうが普通の「インフルエンザ」への対応をしていたと聞く。感染された患者、その周辺で偶然に居合わせ、停留措置の対象となったり、外出の自粛を要求された気の毒な方々からは、一定の理解が得られているとも聞くが、世界的な流行を防止する上で、必要な措置であると自ら納得された結果であろう。この方々に対してはあらためて頭の下がるおもいである。今回の新型インフルエンザ対策においては、関係当局はその措置について、説明責任を十分に果たしたうえで、今後も国際社会との連携を行いながら感染の拡大を最小限に抑え、そしてそのノウハウをこれからも起こり得るウィルスなどの感染症対策として蓄積して頂きたいが、私たちが子どもの頃から教えられているように、帰ったらうがいをする、十分手洗いをする、といった習慣は今回の新型インフルエンザの予防に大変効果的だと聞く。またウィルスの性質が明らかになるにつれ、市民生活に警戒は怠らずとも冷静に対処すべきという意見が出てきている。さらに言えば、WHOが発する警報「フェーズ」は感染の広がり方に対する指標であり、大流行、危機的状況、といった意味合いは含まない。パニックから派生する街の機能不全さえ起きつつある現在、私たちはいたずらに過剰な反応をするのではなく、JAYCEEとして持つ知の力によって、社会不安に陥らぬよう、冷静且つ慎重に現実を見極め、行動する必要がある。世界を震撼させる新型インフルエンザ、世界が一つに繋がっていたのだと誰もが実感したのではないだろうか。患者の回復と一日も早いウィルスの終息を切に願うものである。